頻尿とは
頻繁に尿意をもよおしてしまう疾患です。起床してから就寝までの間に8回以上もトイレに行く「昼間頻尿」と、就寝後から起床までに1回以上トイレに行く「夜間頻尿」があります。但し、その日の気候条件や食事・飲食の内容によっても尿意は変わってきますし、もともと個人差もあります。従って、昼間に8回以下であっても、ご自身で排尿回数が多いと感じられている場合は、頻尿といえます。
頻尿の原因
- 過活動膀胱
- 残尿過多
- 多尿
- 尿路感染症
- 腫瘍性
- 心因性 など
過活動膀胱
膀胱に尿があまり溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうタイプです。頻繁に尿意が生じ、トイレに何回も行くようになります。日本では非常に多く見られる病気であり、一説によると800万人以上が罹患していると言われています。前立腺肥大症、脳卒中などの脳血管性疾患、加齢などが引き金となることもあります。こうした症状は日常生活やお仕事に支障を生じますし、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大幅に低下させます。治療で症状を軽減できますので、「歳だから」とあきらめてしまわずご相談にいらしてください。
残尿過多
排尿した後も膀胱内に尿が残っているタイプです。前立腺肥大症による尿路閉塞、腰部椎間板ヘルニアによる膀胱の神経障害などによって膀胱から尿を排出しづらくなり、常に膀胱に尿がたまっているので頻尿になります。進行すると、腎臓まで尿がたまり腎不全を引き起こします。
多尿
尿量が異常に増加しているタイプです。健康成人の一日尿量は、おおむね800〜1,600mlです。多尿は一般的には、一日3,000ml以上に尿量が増加した状態をいいます。水分の多量摂取、利尿剤の使用、糖尿病や腎機能障害などによって起こります。
尿路感染症
膀胱炎や前立腺炎により膀胱が刺激され頻尿になります。
腫瘍性
膀胱がんが進行すると、膀胱の容積が小さくなり頻尿になります。
心因性
神経質な方や小児、あるいは仕事や病気への不安や緊張による心因性の頻尿も多くみられます。
頻尿の治療法
水分の摂りすぎが原因ならば、水分を適切に管理することで改善できます。水分量が適正なのに頻尿となっている場合は、主に薬物療法を行います。膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを主に使用します。有効な薬剤がいくつも登場してきていますので、効果と副作用などの出方をみながら、ライフスタイルや症状に合わせて処方していきます。
尿漏れとは
自分の意思に反し、トイレ以外の場所で尿が漏れてしまう疾患です。医療機関を受診せず、一人で悩まれている方も多いようですが、尿漏れ症状は非常に多く、女性高齢者の約30%、男性高齢者の約15%が罹患していると言われています。
尿漏れのタイプ
- 切迫性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
- 溢流性尿失禁
- 機能性尿失禁 など
切迫性尿失禁
尿意が突然高まり、切迫して我慢できずに尿が漏れる状態です。夜間に尿意を感じて目を覚ます夜間頻尿もよく見られます。大脳の排泄中枢の障害などによっても起こると言われています。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをしたり、重いものを持ち上げたりするときに、腹腔内の圧力が急激に強まり、尿漏れを引き起こすタイプです。原因は経膣分娩での出産、年齢、肥満などで骨盤底筋という内臓を体の下から支える筋肉が弱くなることで起こります。
溢流性尿失禁
膀胱内の許容量を超えて尿が溜まることにより、少しずつ尿が漏れ出してしまう状態です。
機能性尿失禁
尿路系以外の身体精神障害によって引き起こされる尿失禁です。認知機能の問題、例えばアルツハイマー型認知症により、尿意を自覚できなくなったり、トイレの場所が分からなくなったりするケースが代表的です。
尿漏れの治療法
まず、水分を摂取するタイミングを見直します。原則として就寝前や外出前は摂取を控えますが、尿が濃縮されると膀胱を刺激することがあるため、適度の水分は摂取します。
排尿の時間も規則正しく行うようにします。それぞれの患者様の生活リズムなどを考慮し、尿意を上手くコントロールできるようにするのです。
腹圧性尿失禁に対しては、骨盤底筋のトレーニング(骨盤底筋体操)が有効です。効果が現れるまでに時間はかかりますが、継続することが重要です。 膣や肛門を意識してゆっくり締め、5秒保ってからゆるめる動作を1日に何度も行います。
薬物治療としては、括約筋の作用を強めるβ2刺激薬や過活動膀胱で使用する抗コリン薬を用います。これらの薬物療法でも効果が不十分な場合にはボツリヌス毒素の膀胱壁注入療法等を検討します。